2005
10.24

夜が早くなって、夜が冷たくなって、夜が澄み切ってきました。
西の空に残る華麗な夏の星座、控えめで淋しげな秋の星座。
上着を羽織って東の空を見て下さい、
禍々しい程赤味の強いオレンジ色の星、
ランタンのような火星が炯々と輝いています。

一昨年とても大きく見えて話題となった大接近以来の明るい火星、
私達に最も近付くのはハロウィーン前日、10月30日です。

1938年10月30日、あるラジオ番組が
アメリカ全土に大パニックを巻き起こしました。
タイトルは”The War of the Worlds”、
伝説のラジオドラマ「火星人襲来」です。
ハロウィーンには火星人もやってくる‥‥!

mars1030

(ナルシア)

2005
10.23

ニューイングランドの地方都市・ライツヴィル、
本格推理小説ファンには忘れられない田舎町。
高名な推理小説作家にして我らが名探偵、
エラリイ・クイーン氏の愛する、calamity town。

三十一日は狂乱の一日だった。〈丘〉の家々は一日中だれが鳴らしたともわからないドアのベルで悩まされ続けた。舗道には色のチョークで恐ろしい記号が書かれた。夕方になると、いろいろの衣装をつけた奇怪な子鬼たちが、顔に絵具を塗り両腕を降りまわしながら町中をとびまわった。  
(『災厄の町』ハヤカワ文庫)

小学校の図書館から始まったクイーンの
フェア・プレイ謎解きにはまって、
父の蔵書を読み倒していた中学生の頃は、
とにかくトリック解きと犯人当てに必死でした。
新古書店で安く手に入るようになった古典ミステリの誘惑に負け、
犯人が判ってるのに今読んで楽しめるのだろうか、
と訝りながらライツヴィルを舞台とした第一作目、
懐かしい『災厄の町』を先日再読してみたら。

惨劇の舞台は三人の美しい娘を持つ、町一番の名家。
ハロウィーンの日に発見された「配達されない三通の手紙」によって予告された悲劇は、感謝祭、クリスマス、新年、聖バレンタインデー、復活祭、と華やかで楽しい祝日イベント毎に現実の物となってゆきます。

あの頃はハロウィーンなんて身近なものじゃなかったから、
重要な場面の情景も、きっと当時の私の中では
全然イメージできてなかったんだろうなあ。
謎解きに夢中になっていた中学生の頃とはまた違って、
地方都市の美しい四季の情景と豊かな暮らし、登場人物の心理等は
大人になってからの方がより楽しめるので、得した気分です。

夕食前に近所を散歩したクイーン氏は、もう一度子供にかえって、
十月三十一日のハロウィーンのわるいいたずらをやってみたくなった。  
(『災厄の町』ハヤカワ文庫)

ニューヨークっ子のエラリイのやった「わるいいたずら」って、
どんなのだったのでしょう。ペーパーぐるぐる巻きとか落書きとか?
お父さんがニューヨーク市警の警察官だから、
とんでもなく「わるい」事はできないだろうけど。
エラリイが田舎町のハロウィーンに郷愁をそそられたのは1941年、
静かな町の外からは密やかに戦争の影がしのびこんで来ています。
ライツヴィルは架空の町ですが、世界中の読者にとっても、懐かしい。

(ナルシア)

streetofH

『災厄の町』著者:エラリイ・クイーン / 訳:青田勝 / 出版社:ハヤカワミステリ文庫1977

2005
10.22

ハロウィーンシーズンにおすすめの一冊は、
アン・マキリップの異世界ファンタジー。(シィアル推薦)

タイトルどおり、猫が大活躍します。
しかも、黒煙色の美猫。ニフィ・キャット。

どうやら人語を解し、自分の役割-亡き主人のマンガン摂政から預かった使命、
つまりエスファニア公国の若きジェイマス大公を守ること-
を心得ているようです。
そう、まるでマンガンが乗り移ったかのように。

そして、聡明な彼女が戦う相手は、悪に長けた魔女姉妹。
なんのためらいもなく、邪魔者を消す魔女の片割れは
隣国の王妃となって、エスファニアをも狙ってきます。

王になったジェイマスと、隣国の貴族の娘とのロマンスあり
(3人の娘のうち、彼が選んだのは誰か?読んでのお楽しみ)、
毒薬の陰謀あり、怪物狩りありで、一冊とはいえ短い物語は
飽きさせない展開です。

そんななかで、猫らしい魅力もたっぷりふりまいてくれる
われらがニフィ・キャット。

作品の中でも、「猫にわかるわけないわ」
なんておっしゃるのは、猫ぎらいの人です。
猫好きは、猫のすることを信じ、見守ります。

そう、だからこそ猫は、使命を果たせるのです。
大切な人の命を守るという、犬も怖じける危険な使命を。

chaiko-chikita

チャイコ・キャットは気づいてる。ハイ急いでチーズ!

(マーズ)

『だれも猫には気づかない』
著者:アン・マキャフリー
訳:赤尾秀子
出版社:創元推理文庫2003

2005
10.21

さて、質問です。

この方々の共通点は何でしょう?

nazonazo

『ロード・オブ・ザ・リング』の監督、ピーター・ジャクソン。

『大草原の小さな家』シリーズでお父さん役を演じた、
マイケル・ランドン。

寡作ながら没後数百年たっても話題の多いオランダの画家、
ヨハネス・フェルメール。

女性の絵で知られるエコール・ド・パリの画家、
マリー・ローランサン。

ロマン派の詩人、『エンディミオン』のジョン・キーツ。

印象派にも影響を与えた江戸の浮世絵師、葛飾北斎。

さあ、どうでしょう。彼らの共通点は?

答えはこちら↓

みんな、ハロウィーン生まれなのです。

(マーズ)

2005
10.19

ハロウィーンのインテリアやお菓子を
エレガントに飾るクモの巣。
本物っぽいクモの巣の絵を描こうと思っても、
なかなか難しいですよね。
私は小学生の時、ホラーな絵の背景に
クモの巣らしいクモの巣の絵が描きたくて、
裏窓のクモの巣をスケッチしているうちに
面倒くさくなったおぼえが。

ところで、本物のクモの巣を
簡単にコレクションする方法があるそうです。
夏休みの自由研究に困った小学生の女の子が、
理科研究の指南本でみつけたのが
「クモの巣の標本の作り方」。
どうしてそれにしたの?
「だって、一日でできるもん!」
そういう理由ですか。

まず、綺麗なクモの巣をみつけます。
家主のクモを追い出し、網にくっついたゴミを取り除きます。
黒い画用紙に薄めた糊をまんべんなく塗っておきます。
クモの網にスプレー式の白いペイントをかけます。
糊を塗った黒画用紙に上手にクモの巣を貼付けます。
糊が乾いたら仕上げにスプレー式のクリアラッカーを吹き付けます。

彼女の自由研究は、最初におじいちゃんの家の
クモの巣を取払い、そのクモが新しい巣を
かける様子を順番に写真に撮って観察記録をつけ、
最後に完成品の巣を画用紙に貼って提出したそうです。
一日で新しい巣を作れるとはいえ、
クモもなかなか御苦労様でした。

そして彼女は気付いてしまいました。
うちの庭の楓とウバメガシの樹の間に張られた
直径80センチ程の見事な女郎蜘蛛の巣に。
「ああっ!すごい!キレイなクモの巣!」
こ、これは駄目っ!

(それがジョロウグモのコトワリですもの・ナルシア)

2005
10.18

ちょうど運転している私のアイレベルと同じところにいた、
彼か彼女かわかりませんが。(やっぱレディかな)
あまりにもジャストだったので、記念に。

「ハロってる?」

justmeet

目にもあざやかなカキのデコレーション。
ちょうどハロウィーンのお皿にぴったりだったので、
記念に。遊んでみました。

kaki-monster

「ハロってる!」

もともとは、ゴージャスなケーキだったんです。

ちょっとカマキリに似た大きな二つの目は、
アーモンド入りチョコレート。
手足のようなヒゲのような黒いのは、
黒ゴマのポッキーです。

すごいボリュームだった。。
完食断念。
(マーズ)

2005
10.17

窓の外を御覧なさい。天空高く、煌煌と輝く十月の満月。
洋の東西を問わず、冴え渡る月の魔力は
美しく恐ろしい物語の数々を照らし出してきました。
今夜は日本の名作短編ホラーに登場する月をどうぞ。

それ(月)があまり明らかなので、
殆ど球状をなしているとは信じられないくらいで、
叩けばボアーンと音のしそうな、
薄っぺらな円盤か何かのような気がした。
                 ‥‥横溝正史『かいやぐら物語』

ところが戸外へとびでたわたくしは一瞬
いすくんでしまいました。
中天にまんまるな物凄い月がかあっと輝いているのです。
わたくしはきょう迄あれほど逞しい月に出会ったことがありません。
                       ‥‥西尾正『海蛇』

そのとき雲から月がぬけだして、ふさの顔が明るく浮き上
がって見え、正四郎は持っている盃をとり落しそうになった。
──あの晩の顔だ。
               ‥‥山本周五郎『あの木戸を通って』

すごいような月が真上にのぼって、広場の中は隅々まで見えるほど、
明るかった。
と、私は涸れた泉のほとりに、動くものがあるのを見た。
猫だ。
また数が増えて十匹あまりの猫が、青びかりのする毛皮をうねらせて、
泉のほとりをひっそりと歩いていた。
                     ‥‥日影丈吉『猫の泉』

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眩いほどの月の下、如何な惨劇がおきたのか、
未読の方は直に巨匠の筆になる物語をお読みになって下さい。
いずれも先日、昭和十年~二十年代の作品を収録した第二集の出た、
本邦の「怪奇と幻想」小説の決定版アンソロジー、
『日本怪奇小説傑作集2』創元推理文庫)に収録。(ナルシア)





『日本怪奇小説傑作集 2』
編集者:紀田順一郎,東雅夫
出版社:創元推理文庫


『リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選』
 → 横溝正史「かいやぐら物語」
編集:高原 英理
出版社:ちくま文庫


『西尾正探偵小説選1』論創ミステリ叢書
 → 「海蛇」
著者:西尾正
出版社: 論創社


『おさん』
 → 「あの木戸を通って」
著者:山本周五郎
出版社:新潮文庫

nekoizumi
『猫の泉』 (日影丈吉選集)
出版社: 河出書房新社