10.24
ハロウィーンを楽しもう!
1週間以上も旅に出ていた人生の季節が
懐かしまれるこのごろ。
イラストの黒いペン画から水彩の色が浮かんでくるような
高柳さんの旅本が、なぜかシィアルのところに
2冊あったので、1冊をもらい受けました。
イギリス湖水地方。
1泊2日でロンドンから訪ねた、夏のリゾート地。
ピーターラビット、ツバメ号とアマゾン号、
湖と小さな町のかわいいお店…
なつかしさにキュッとなってしまいます。
食料雑貨店に売られていたハロウィーングッズが
帽子やホウキだったり。
ドクロマークの入ったアマゾン号の旗のスケッチは
ハロっぽいなと思ったり。
ああ、湖水地方を訪ねた〇年前、
ツバメ号とアマゾン号を読んでいたら
それと知ってカンチェンジュンガを
仰ぎ見ることができたのに。
コニストン村のメインストリートには
11月5日のガイ・フォークス・デイに向けて
おかしな顔の人形が座っているスケッチもあります。
その日の大焚き火と花火のお知らせが出ているかと思えば、
ハロウィーン仮装ダンスディスコのお知らせが
肉屋さんに貼ってあったりするのです。
「ハロウィーンもガイフォークスも、この村はとても似合いそうです。」と
高柳さんは書いています。
『イギリス湖水地方を訪ねて』
著者:高柳佐知子
河出書房新社1995
10月ともなると、
新聞や雑誌でもハロウィーンの特集が組まれています。
10月7日(火)の読売新聞では
「手作りハロウィーン」で、
費用をあまりかけず簡単に作れる装飾品の紹介が。
LEE11月号では、
見開き2ページで「エンジョイ、ハロウィン」
「お出かけ、パーティ、おうちデコ」のアイデアについて。
→「楽しい、飾れる!ハロウィンの切り紙!」(拡大は、できません…)
拡大コピーをして、切って、つるすだけで、
ハロの素敵なガーランドができます。
そして、
ハロウィーンは少女雑誌でも。
りぼん11月号の付録に注目!(さすがに購入はしてませんが…)
ハッピーハロウィン☆ステショセット
ハロウィーンのお菓子を模した
ボールペン、マーカー、メモ、消しゴム等6点セットです。
→ 詳しくはこちら
りぼんわくわくステーション「今月のふろく」
http://ribon.shueisha.co.jp/this/
手間暇かけなくても、
ちょこちょこっと、ハロウィーン気分を楽しめます。
(シィアル)
それはずばり、
『ハロウィーンの夜』(著者:ヴァイオレット・ウィンズピア )です。
でも、原題は”By Love Bewiched”
ヒロインは幼くして両親をなくしたダイナ。
母親の遠縁で桁外れな資産家でもある
銀行家のジェイソン・デブレルに引き取られます。
物語は、この2人の「両」片思いの気持ちのすれ違いから、
ダイナが本当の愛に気づくまでの物語です。
2人の気持ちのすれ違いの発端がハロウィーンパーティの夜なので、
このタイトルになったのでしょう。
クリスマスイブ、母の日、ハロウィーンと年三回パーティを開くのがデブレル家のならわしだった。その年のハロウィーン・パーティーには、屋根裏部屋にあった、ジェイソンの祖母の形見の百姓娘の衣装を着るのをダイナは楽しみにしていた。ハロウィーンは魔法使いが出てきて浮かれ騒ぐ夜だから一種独特の奇怪さがあり、なおのことわくわくしていた。
『ハロウィーンの夜』
招かれた客人も趣向を凝らした衣装に仮面を付け、
楽団の演奏でダンスに興じていて、大がかりで華やかなパーティが開かれています。
ハロウィーンのシーンはこの冒頭だけですが、
30年前の1984年に書かれたこのロマンス小説では、
ロンドンで女の子が自分で働き、
自活していくことはなかなか大変で、
特にその頃は失業率も高くなり、
犯罪も増加していったというような世相も垣間見られます。
惜しみない愛を注ぎながらも言葉足らずのジェイソンと
未熟さ故に頑ななダイナ。
ハロウィーンの夜というのは、
互いの思いを受け入れることができない、
大きな壁であり、
その誤解を互いにどう乗り越えて愛を成就させていくのか。
無理矢理ハロウィーン観点であらすじを説明すると、
そんな風な物語です。
最後に、作者ヴァイオレット・ウィンズピアについて。
Violet Winspear (1928 – 1989)
ロマンス小説の草創期に活躍したイギリスの作家で、
1961~1987まで執筆活動を続け、70冊のロマンス小説を残しています。
第二次大戦中、14歳の頃から労働を強いられ、苦しい生活の中から“現実が厳しければ厳しいほど人は美しい夢を見る”という確信を得て、ロマンス小説を書き始める。
amazon 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
amazonのヴァイオレット・ウィンズピアの解説を読んで、
たった1行なのですが、
「現実が厳しければ厳しいほど人は美しい夢を見る」
この言葉そのものと、
何より、その思いで小説を書き続けたヴァイオレット・ウィンズピアに心を打たれました。
同じくイギリスの作家ベティ・ニールズ(1909 – 2001)が
「よいロマンス小説がない」ことを嘆く女性の声をきっかけに、
ロマンス小説の執筆を決意したというエピソードを思い出しました。
この2人はロマンス小説の作家ですが、
2人の執筆のきっかけには、ロマンス小説に限らず、
作家の使命を感じます。
本は人生に夢や輝きを与えてくれたり、
どんなに辛いときでもよりそい、ほのかに人生を照らしてくれます。
それは、そこには、そうありたいと願い執筆する、
作家の思いがあるからなのですね。
(シィアル)
『ハロウィーンの夜』
著 者:ヴァイオレット・ウィンズピア
訳 者:堤 祐子
出版社:ハーレクイン文庫(2009/10/1)
時刻は夜更け、月は淋しい十月、それも
いちばんぼくの忘れがたいあの年の十月だった。
場所は暗いオーバー湖のほとり
霧ふかいウエア地方のただなか―――
オーバー湖の暗い水辺のあたり
ウエア地方の幽鬼たちの住む森の中―――
エドガー・アラン・ポーの詩「ユーラルーム―――バラード」より
(『ポー詩集 対訳』 加島祥造編 岩波文庫1997)
※ユーラルームとは、亡き女性の名だそうです。
編者の解説によると、この夜更けとは、十月の万霊節(原文のまま)の夜だと
書かれています。
(マーズ)