10.10
ハロウィーンを楽しもう!
ある日、前を走っていたバスの表示。
…目の迷いでしょうか、
deadhead
と、黒地にオレンジ色の文字が。
普通車の運転席からは位置が低すぎて
見づらいので、思わず追尾して
確かめました。
確かに、deadhead です。
死んだアタマ?
辞書を引いてみました。
もともと、飛行機の乗務員が
制服は着たまま、客室に座って移動する
状態を言ったりする業界用語で、
回送バスなどにも一部で使われる言葉でした。
でも英語なら、out of service を表示する
交通機関が一般的なような。
ただ、長いので表示画面の枠に
収まりきらない。
どちらの英語にしても読めない人は多いから、
基本、日本語の「回送中」で
いいんじゃないか?という一般論に
流されそうになりながらも、
ハロウィーナーとしては、このうえなく
満足できる選択なのであります。
縁起悪そうだけどね!
10月31日には
運転手さんに仮装してほしいなあ。
最近は記者が軽蔑する怪談が多くて困りますが、
去る二六日の夜十時頃、両国若松町を通りかかると、
生臭い風が吹いて来て、俄に体中がぞくぞくしたと
思うと、上の方から九〇センチ余りもあろうかという
大きな顔が、目口を開いて睨んだ。恐ろしい化け物の
裾の方は、細く見えたという。確かに出会ったという
松島町の和三吉という人からの知らせでした。
二六日の『報知新聞』にも、上野の山下で、人力車
挽きの顔を顔をペロペロと舐めたというお化けのことが
ありましたが、なんと希有な話ではありませんか。『東京平仮名絵入新聞』 明治八年九月二九日
『帝都妖怪新聞』湯本豪一 編 より
江戸時代が終わり、
文明開化によって、人々は数多の怪異情報を知る時代となる。
明治時代、国内外の怪異情報が新聞によって報道されている。
「文明開化」「新聞」が新しい時代をもたらし、
そしてその文明が、江戸時代では知り得なかった
国内外の未知の怪異事件の情報を
日本国内外へと拡大させていったというのは
なかなかに興味深いことである。
好奇心誘う、怪しげな記事満載。
新聞は、聞き慣れない『東京平仮名絵入新聞』だけでなく、
『東京朝日新聞』『大阪日日新聞』や
さらには『東京絵入新聞』『萬朝報』などさまざま。
明治時代に発行されていた新聞名チェックも面白い。
帝都妖怪新聞
編:湯本豪一
角川ソフィア文庫
(シィアル)
このあたりの慣習では、ハロウィーンの夜11時と日付の変わった12時過ぎに、
家で一番年長の男と一番年若い男の子が農場を回ることになっています。
夜中の11時(ハロウィーン真っ最中)は、二人が巡回すると、
農場の動物たちはどの動物も起きていて、魔女の気配を知っているようです。
蜜蜂小屋でも蜂はせわしく働いているようでした。
それが、真夜中を過ぎて(日付は変わって、11月1日つまりは万聖節)、
2度目の巡回をしたときには、動物や蜜蜂たちも静かに眠っています。
この物語では、ハロウィーンの夜、農夫は魔女が化けた3匹の動物
(フクロウ、ネズミ、コクマルカラス)を退治しています。
農夫の最後の言葉です。
“You won’t have to worry about any whiches for another
twelvemonth.”
とりあえず、これで来年まで魔女の心配はありません。
イギリスでこの本が出版された年や物語から遡ると、1900年代初頭の農夫たちの
日常であったと思われます。
“Whiches at Hallowe’en”は『万聖節の魔女』と訳されていて、
「ハロウィーン」という言葉は物語の中にも出てきません。
この本が出版された今から30年以上前の日本では、「ハロウィーン」という言葉も
一般的ではなく、かといって「ハロウィーン」を置き換える言葉もなく、
そもそも「ハロウィーン」とは何かということにもまだ、興味や関心のなかった
時代だったのでしょう。
この物語のオリジナルは”A Sampler of British Folk-Tales”、
著者はKatharine Briggsです。
PART17 Whichesの”Whiches at Hallowe’en”が、『万聖節の魔女』です。
興味のある方は、amazonのなか見!検索で
“Whiches at Hallowe’en”の全文を読むことができます。
British Folk Tales and Legends: A Sampler (Routledge Classics)
翻訳されたものは、こちらです。
『世界の怪奇民話 (1) イギリスの怪奇民話』
翻訳:出口保夫 出版元:評論社
(シィアル)
『万聖節の魔女』という物語の出典は、『イギリス怪奇物語』です。
今から、30年以上前に出版された本です。
この物語では、おそらく今から100年以上前のハロウィーンの夜が
どのようなものだったのかがわかります。
農民の暮らしの中に普通に魔女(ハロウィーン)が存在しているのです。
20世紀初頭、イングランド南東部に住む農夫は、ハロウィーンの夜に現れて、
人間や動物に魔法をかける魔女に備えて、日中はいろいろ忙しく働きます。
家や家畜小屋の窓という窓、出入り口に「コリヤナギの小枝(osier twigs)」を
置いたり、黒いニワトリの羽を犬の首輪や小屋につるしたりと、
魔女が入ってこられないように大忙しです。
なぜなら、コリヤナギや黒いニワトリの羽には魔女よけの力があって、
それを窓や戸口に置くと、魔女はそれを越えて入ってくることはできないと
信じられていたからです。
農夫の家族たちは暖炉の回りに集まってみんなで夜を過ごしますが、
この日ばかりは樫の丸太が暖炉にくべられています。
普段使っている泥炭の匂いは、どんなに遠くからでも魔女にかぎつけられて
しまうからだそうです。また、戸口には魔女よけだけでなく、魔女のための
食事も用意されています。
空腹の魔女から魔法をかけられることを恐れているからです。
…第二夜へ続く(シィアル)
近年はTVドラマでも、あたりまえのように
ハロウィーンの光景が登場するようになりましたね。
一昨年の十月始まりの秋ドラマ
『ゴーイング マイ ホーム』は
TVドラマの枠の中に、通常のTVドラマとは異なった
ゆったりとした時間の流れる不思議なドラマでした。
それもそのはず、脚本・監督が是枝裕和。
このドラマの翌年、カンヌの審査員特別賞を受けた映画
『そして父になる』のあの是枝監督です。
都会に暮らす大の大人が森に棲む小人を探す。
目に見えないものは、本当はやっぱりいない
‥‥のかもしれないけれど、
それでもその存在を感じてみたい。
小さな日常の場面を丁寧に積み重ねる事で
家族や様々な人々とのつながりを感じさせる手腕は
TVドラマとしては異質ながら、
じんわり、さすがの味わいでした。
十月はじまりのドラマでしたから、
第三話でハロウィーンがあります。
森のある田舎町のほうの場面で、
黒いポリ袋や色画用紙で衣装を作り、
子供達が文化住宅を回るという、
土着型トリックオアトリート。
このチープさにも、はっとするような現実味があります。
ハロウィーンはこれほど日本に定着したんだなあ。
ぺらぺらの黒いポリ袋をまとい、
夕闇の中で炎に照らされるヒロインの微笑は
まるで本物の魔女のチャームのようです。
(ナルシア)