1994
10.31

【ハロウィーン・デコレーション】
 ハロウィーンが近付くと普段は清潔で静かな町に、わらわらと物の怪たちが湧いてきます。

 トイザラスのようなおもちゃ屋には、フロアいっぱいのディズニーキャラクターや忍者やおばけの仮装衣装。クラフト用品店には小さなしゃれこうべやコウモリのオーナメント、オレンジと黒のリボン、魔女のとんがり帽子。
グロッサリーストアは入り口に巨大なかぼちゃをごろごろ転がし、一歩入ると大袋入りのキャンデーが山積みです。ケーキ売り場にはチョコレートで蜘蛛の巣を描いて砂糖の蜘蛛をのっけた無気味なケーキが。
 住宅地も負けてはいません。美しい芝生の続く高級住宅地には目口のついた橙色の大きなかぼちゃのようなものがごろごろ。実は庭樹の落ち葉を詰め込んだ、ゴミ出し袋ハロウィーンバージョンなのです。ゴミ収集車がゆっくり走りながらひょいひょいと、おばけかぼちゃ袋を庭先から拾い集めてゆきます。
 ドライブ途中にインディアナの郊外で、おうちまるごと蜘蛛の巣でぐるぐるまきにしている一軒家も見ました。ポーチも階段も真っ白な糸に包まれて、廃屋というよりはモスラに襲われたような姿。それも何軒も。インディアナでははやってるんですかね。  

 さて、数あるハロウィーンデコレーションの中でもやっぱり大王はカボチャ提灯、Jack-o’-Lanternです。 あの三角の目鼻、歯をむき出してわらう口、中で点る蝋燭の炎が橙色の顔を透かし、ゆらゆら影を投げ掛ける、怪しくも愉快なおばけのかぼちゃ。 このジャック・オ・ランタンがポーチに灯っているおうちは、ドアをノックするとキャンデーをくれるお約束です。

 十月末のある日突然、道路わきの空き地が一面オレンジ色のカボチャ畑になります。近郊の農家から、形のよい大きなカボチャを運んで来て、並べて売っているのです。直径五十センチ程。どちらかといえば縦長が多くて、面長のランタンができあがります。

 さあ、気に入ったカボチャを担いで帰って、おうちでカボチャ提灯を作りましょう。

■ Jack-o’-Lantern (カボチャ提灯)の作り方
(1) かぼちゃを買ってくる。

(2) かぼちゃをくり抜く。
  ヘタの部分をふたにするので、上から数センチを水平に切り取り、
  中味をほじくり出す。水っぽいので人間は食べない。
  くり抜く道具や切り取る道具は“Pumpkin Curving”用として
  セットでも売っている。

(3) 下絵を描いて目鼻を抜く。
  トレースしてなぞって切り抜ける「ハロウィーン顔」の型紙を売っている。
  いろんな表情の顔の型紙がある。
  猫目ヒゲ付きトラ縞の猫提灯はCat-o’-Lantern!

(4) 保存する。
  湿気の多いと言われるアラバマといえど大陸なので、
  日本よりはるかに乾燥しているし、十月でも暑い日もまだまだあるので、
  ほっとくと当日までにちぢんでしまう。

  ※ 知り合いのお嬢ちゃんはあんな巨大なものを冷蔵庫に入れていた。
    ポーチの隅でお風呂に浸けて置いてあったりもする。ふたも一緒に保存。

(5) ろうそくを灯す。

  完成! 

■ 日本のおばけかぼちゃ
 わたしが日本でJack-o’-Lantern用のかぼちゃを初めて見たのは、まだ巷でハロウィーンがあまり知られていないころ。以前住んでいた近所のナショナルスーパーマーケットの横を通ると、駐車場のワゴンの上に異様に巨大な物体がごろごろと。なんだかわからないものの、しばらく笑ってしまいました。数日後ベーカリーに入ろうとしたら、鋪道に可愛い猫の衣装をつけた二人の西洋少女が座ってパイをかじっている。ああ、これがハロウィーンかあ、と思いました。大使館の多い地区だったのです。

 今住んでいるいなか町は、九月にジャンボかぼちゃコンテストをしています。グランプリは市役所などに展示されていますが、一メートル以上はあります、提灯にするには大きすぎる。

 ちょうどのサイズのかぼちゃがあってもそれを目印にトリック・オア・トリートに訪れる子供達もいないのですから、小さいのでいいんですが、 さて。

食用かぼちゃはおいしけれど堅すぎて、加工もできないし光も透かしません。オレンジはどうでしょう。皮が果肉の色を遮って、ちょっと違う。

 そして私はついに、小さくて加工しやすくて、この時季にあって、透き通る暗いオレンジ色が炎のゆらめきを映し出す、ぴったりの素材をみつけて手に載る程の可 愛らしいランタンを作ることができたのですが、 …あんまり正体を言いたくないなあ、でも、マーズが気に入ってるようだから、…

がっくりしないでくださいね、 あの赤味の強いオレンジ色は、どうみても「柿色」です。

ですから、そう。柿を使ったんです。アメリカに柿?ありませんよ。とっても神秘的なキャンドルスタンドになるんです、だまってれば。

■ Kaki-o’-lanternの作り方
(1) 大振りで座りの良い柿を選ぶ。
  固からず軟らかからず、適度な熟れぐあいのものを。

(2) 柿をくり抜く。
  ヘタの部分を取り除くように上部を水平に切り取り、中味をほじくり出す。
フルーツカップを作る要領。実はもちろん食べる。

(3) 下絵を描いて目鼻を抜く。
  水性サインペンで下絵を描くと何度も描き直しができるし、抜いた後
  ふきとれば消えるけれど、こすると手や服が真っ黒になるので御注意。
  目鼻を抜くときは小さな果物ナイフ等を垂直に刺す。

(4) 短く切って少し芯を出したロウソクの下に、短く切ったつまようじを挿し、
くりぬいた柿の底に立てる。

カーテン等燃え易いものから離れた所に置いて、
キャンドルの明かりで魔女達のパ ーティーをはじめましょう。

(By Narcia)