2017
10.24
10.24
「トラさんトラさん」
「ゾウさんよ、1年ぶりだな」
「どうだい、上手くいったじゃないか」
「お前さんが鼻で引っ張り出してくれたからな」
「絵の中は辛気くさくていけねえよ、トラさん」
「まったくだ。で、今夜はどこへ行くね?」
「あんまり遠くへは行けないんだから、ここな博物館の隣の墓地にするかね」
「墓地に出るゾウ、なんつって。仮装して回る子どもらがビックリ仰天さ」
「それにしてもトラさんはうらやましいよ」
「何でだい」
「だってほら、今夜は柿色と墨色の祭りなんだろ。毛皮そのままじゃないかね」
「そういやそうだ。しかしワシは、カボチャのお化けは見たことないが」
「アタシだって、黒猫やらコウモリやら、普通にいるもんが
どうして怖いのか、わからんのさ」
「ワシらは偉い絵描きの筆だからな。見ただけで震え上がるさ。
そうすりゃ、またこの博物館に客が押し寄せるだろ」
「抜け雀ならぬ、抜けゾウに抜けトラ、ってね」
「どうもそれ、あんまし怖くねえんじゃないか」
「それじゃ墓場のやつらも、引っ張り出そうか」