2003
10.17

エルキュール・ポアロとハロウィーン。

去年だったか、シィアルに紹介を頼まれて忘れていて、今年になってまたこの本をやおら探したところ、幸運にもその日に見つけました。

ポアロとは旧知の探偵作家、オリヴァ夫人が招かれた、イギリスのハロウィーン・パーティーでひとりの少女が殺されます。
しかも、ボビング・アップルのおけで溺死させられて。

少女を殺した人物は?
すでに老境のポアロは、オリヴァ夫人の依頼で、事件の捜査に乗り出します。

読んでいると、発表されたのは1969年というのに、まるで昨今の日本の世相のようで身震いしました。
犯罪の加害者と被害者の低年齢化、精神鑑定が必要な犯罪者の増加・・・

そもそも、ハロウィーンパーティーの様子が出て来るという理由で探したのですが、
確かに、スナップドラゴンという危険な火遊びも出てきて興味深かったです。
イギリスにも、本格的なハロウィーンがあるの?
と思われるかもしれませんが、このパーティーは、特別念入りに計画されたものだったのでしょう。
ただし、殺人のあったこのパーティー、ポアロ自身は参加していません。

当日のだしものは、証人によって多少順序が違うのですが、
箒の柄の審査(賞品付き)、風船を突いたりぶったりするゲーム、
リンゴ喰い競争(ボビング・アップル。障害物競走と呼んでいる証人もいます)、
小麦粉ゲーム、
電灯が消えるたびに相手を変えるダンス、
女の子が暗い部屋で鏡をのぞき未来の結婚相手を見る遊び、
食事のあとに「スナップ・ドラゴン」です。

スナップ・ドラゴン/ぶどうつまみゲームとは、ブランディをかけて火をつけた干しぶどうの大きな皿から、焼けたぶどうを手でつかんで食べる遊び。
灯りを消して、炎が消えるまで楽しみます。
むしろクリスマスを連想させるようなもの─と書かれています。

小麦粉ゲームというのは、コップに入れて押し付けた小麦粉をお盆に伏せて山を作り、
その上に6ペンス硬貨を置き、みんなで6ペンス玉を落さないよう、順に少しずつ山を削り取ってゆきます。
玉を落したらアウトで、最後に残った人が、6ペンスもらえるというもの。

本作は、クリスティー79歳の作品。
オーソドックスな謎解きの展開でありながら、マクベス夫人、庭園の薀蓄、ウンディーネ、生け贄の儀式、「オオカミが来た」のうそつき少年(少女)など、イマジネーションゆたかなモチーフが多く登場し、犯人探しだけでなく、全体がこわ楽しい「ハロウィーン」のムードになっているようです。

なお、原題では「Hallowe’en Party」とつづっています。
(マーズ) 2003年10月17日

『ハロウィーン・パーティ』
著者:アガサ・クリスティー
訳:中村能三
出版社:ハヤカワ文庫1977