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Archive for 12月, 2015

12月
26

土に。

あれは11月はじめの夜だったと思う。

アビィと散歩していたら、近所の道ばたに

野鳥が倒れ伏しているのに行き当たった。

口もとに鮮血を吐いていたので、ほんの少し前に絶命したと

わかったが、黒い瞳は澄んで輝き、

飛び立った命がしのばれた。

鳩ほどの大きさで、くちばしがひどく細長い。

見たことのない鳥だったので、帰って調べたら

チュウシャクシギのようだった。

それから何日たっても、田舎とはいえ人通りのある場所ではあったけれど、

民家の塀ぎわで茶と黒の保護色をしているせいか、

手をつけられることなく、私も傍観するばかりだった。

家の人も裏手なので気づかないのだろう。

やっと仕事が一段落したこともあり、

きょう、化石のような形で軽くなった鳥を拾い、

近所の山裾へ埋めにいった。

埋めるといっても、上に土を掛けるといったほうが

正しいぐらいで、もう野けものに漁られる段階でもない。

すっかり枯れた落ち葉とわずかな土におおわれ、

鳥の体は静かな場所を得たのだと思う。

それから帰ってきて、

やはり近所の散歩コースからもらってきていた

ジュズダマを庭の水場近くへ植え、

友人にもらっていた白椿の種を、鉢へ植えた。

 

土へと還るもの、

土から生きるもの。

ジュズダマや椿を、こんな時期に植えてよいのかは

わからないのだが。

チュウシャクシギはいつか、

目の前を羽ばたいてゆくだろうか。

ジュズダマが庭に実り、

白い椿が花びらをひらくだろうか。

2015年は、あてどなく生きてきたこの人生で

かつてなかったほどの年であった。