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Archive for 3月, 2017

3月
04

お雛様に謝る。

箱を開けたとたん、

どきっとするような表情と目が合った。

泣きそうな、というのか、気が狂いそうなほどの

表情に見えたのだ。

2年もお顔を見ていなかった、もとい、お祭りをしなかった。

3月中旬にあった父の法事やら、お雛様を飾る担当の母が

日帰り旅行をするのやらで。

あまりにも久しいので、

私が箱を開けたのは、今年、3日の夜であった。

昨年、お雛様を出さなかった。母が胃腸炎になった。

今年もお雛様を出してなかった。母がまた胃腸炎になった。

2年とも、母は旅行をキャンセルした。

そして数年前のことである。このお雛様をしまう時、私は、良かれと思って

お顔を薄く柔らかな和紙で包み、その紙でこよりを作って

お顔の上を、ほどけないくらいに結んだ。

1時間もしたころ、スーパーで買い物していた母が突然息苦しくなり、

お店の人に水を飲ませてもらったというので、

あわててお雛様のお顔から、紙を取り除いた。そんなことがある。

お雛様は私を守ってくれているはずだから、

何かあると、私ではなく、出し入れ担当の母に、

訴えるのかもしれないなあと思った。

今年も法事を控えているので、質素な飾り方だけど、

赤い布の上にお雛様とお内裏様を並べ、お酒をまつる。

3日はあり合わせのイチゴなどお供えをして、花がないので

植木鉢からオレンジ色のビオラを摘んで、皿に浮かべて。

4日のきょうは、2割引になった雛餅、ピンクの花、

お菓子を増やし、ハーシーのキスチョコを

5人囃子と3人官女に見立てて、二人の前に並べてみた。

お雛様の表情が、だんだんほどけてゆく。

不思議だけれど、ちゃんと感応しているのだ。

いまは、うれしそうに微笑んでいる。

相済まぬことをしました、お雛様。

もう行き遅れの心配はないから、いましばらく

表に出ていてください。