Home » 生きとし生けるもの » アビィは変わった。
3月
05

昨年の末に、アビィの犬小屋を買った。
来たるべき寒波に備えて、あまり犬小屋の中で眠らないアビィが
ゆったりできるようにと。
彼女が5年も住んできた小屋は、父が作ったものではあるが、
アビィがまだ成長しきってないころ、先住犬であるルーの小屋と同じサイズで作った。
ふとアビィのサイズを測ってみて、体長が80cm以上あることを
知ったので、さすがにこれではいけないと、あわてて探した。
奥行きが80cmしかなく、満足に立てない、体を伸ばせない狭さだったのだ。
取り寄せた犬小屋は、木のパーツを組み立てて作った、とんがり屋根。
じゅうぶんな広さが確保できた。ただ、入り口に扉はない。
閉じこめられたくないようだし、寒さには強い犬だから、扉のことは後から
考えることにした。(今はバーを付けて、犬用のファブリックを垂らしている)
さて、アビィは何日も、外で寝ていた。ほとんど小屋には入らない。
それでも雨の日はさすがに中で寝ていたと聞いて、では何が、ためらわせているのかと。
そこで、仕事で会ったドッグトレーナーさんに聞いたことを実践していった。
コミュニケーションはアイコンタクトから始まるというので、
目を合わせては言葉を掛けた。
そして、犬小屋へ身を半分入れて、広いね、いい家だねと
ほめたたえることもした。自分で買っておきながら褒めるというのも
おかしなことだけど、そこはそれ。
気のせいかも知れないけれど、ちょっと、まんざらでもない顔をしていたような。
そんなことをしていたら、アビィは「ハウス」と言えば、
犬小屋へ入るようになっていった。1週間もしないうちに。
フードで引き付けるということはせず、頭をなでるとか、褒めるとかで。
それだけではなく、「好きな人が呼んだら絶対来る」というトレーナーさんの
言葉どおり、庭で放していて、つなぎたい時にも、
呼べば素直に来るようになったし、顔つきまで変わったのだ。
焦げ茶だった顔の色が薄くなってきたこともあり、
以前のアビィとは違う犬といってもいいほど、堂々として落ち着いた。
いつごろまでだったか忘れたけれど、つい最近まで、人が近くを通ると、食事していても
飛び上がるような臆病さがあった。子犬のころの放浪体験が
尾を曳いていたのだが、それも今ではほとんどおさまっている。
今までの5年間を通して、ずうっと、持てあまされてきたアビィ。
うちへ来るまでの苦難が溶けてきたのは、時間がたって
落ち着いたせいもあるだろうけど、アビィをあずかる私との関係も
やはり、大きいのだと実感した。
先住犬の老いたルーがいるわけだし、両方を同じようにかわいがるべきだとは
言っても、嫉妬する犬たちをどうすればいいのか、あきらめかけていた。
成犬が1ヶ月くらいでこんなに変わってしまうとは、思いもしなかった。
ちょっとしたコミュニケーションのコツを教えてもらったことで、
アビィは前よりも幸せな犬になったと思う。
私もまた、幸せな飼い主になれた。
6年目が始まった。
これで、アビィがルーを噛むことがなくなれば、
ルーもまた、幸せになれるだろう。
去年すっかり聴力を失ってしまったことも、ライバルのアビィに対しては
ルーの気持ちを落ち着かせているようだ。
狷介な闘争がなくなることを願っている。