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8月
31

小さな花は、おそるおそる咲いた。
短い2本の切り花、
黄色い花が終わったら水中に根がのびてきて、新しい蕾が
顔を出したから、そのまま窓辺に飾っておかれた。
でも、最初のつぼみは枯れてしまった。
次のつぼみも、開かなかった。
だからもう、長く伸びた根ごと、コップから出して
ごみ袋の一番上に捨てられていたのを、
哀れに思ったゴミ出し係に拾われ、陽の当たる
窓辺のコップに移し替えられた。
そして何度もつぼみを作ったけれど、
どうしてもコップの中では咲くことができないのだった。
そこで、やっと鉢の中に植えてもらって、土を頼りに
陽の当たる庭先で暮らすようになった。真夏の陽を浴びて。
最初のつぼみは、いかにも咲きそうだったけれど、
枯れてしまった。
もう黄色い色が、そこにのぞいていたというのに。
とうとう、ある朝のことだったか、
小さな花は、おそるおそる咲いた。
最初の花は、まだ上手に開かなかった。
それでも、以前楽しんだ黄色い花を思い出させてくれた。
次の花は、もっと上手に開いた。
3つ目の花は、のびやかに花びらをひろげた。
今はいくつものつぼみが、咲く時を
当たり前のように待っている。
ぞんぶんに咲いてくれるのだろう。
秋が来るまで、まだ時間があるのだから。
小さな花は、咲くことを思い出したのだから。