2014
10.12

ナルシアの「さまようカブ」に少しだけ関連して、
ささやかな続きを書いておきます。
ハロウィーンとは関係のない話ではありますが。

14hallo-hatter

『ハウルと火の悪魔』は、ライト兄弟に次いで世界一有名な飛行家
リンドバーグ(1902-1974)の私生活と、接点を持たせて書かれています。
彼にはアメリカにいた妻子とは別に、ドイツにも妻子がいました。
そのことが公表されたのは、ドイツの妻、
ミュンヘンの帽子屋であったブリギッテ・ヘスハイマーの死後で、
リンドバーグの死よりもずいぶん後のことです。
3人の子どもたちと父親の血縁関係は2003年のDNA鑑定でも裏付けられましたが、
ドイツにはリンドバーグからの手紙が多数残されているそうです。

さて、ハウルの物語との接点とは。
まずは、ドイツ人の妻が、帽子屋つまりハッターであったこと。
ハウルのパートナーとなるソフィー・ハッターは帽子屋の長女です。
本を読んでいる間もその後も、なぜソフィーは帽子屋でなければ
ならなかったのか?という答えが見つかりませんでした。
手に職を持つにしても、他の職業ではだめだったのだろうか?と。

接点の2つ目は、空中を浮遊して動くハウルのお城と
リンドバーグが飛行家であったことです。
あの不思議なお城は、魔法によって空中を移動しているのですが、
リンドバーグはスピリット・オブ・セントルイス号というプロペラ機で
大西洋単独無着陸飛行を成し遂げ、一躍有名になりました。
まるで、魔法使いのように。

日本でアニメーションになった時、
宮崎駿監督は動くお城に脚を付けてしまったのだから、
ソフィーが帽子屋である必要は、なかったのではないか。
とも思うのです。

ソフィーは大団円の最後まで、老婆に変えられた自分が
誰であるのかを、ハウルに隠していました。
ブリギッテもまた、リンドバーグの妻であることを
ひた隠しにしていたそうです。

著者のダイアナ・ウィン・ジョーンズはどこかで
こうした着想を語っているのでしょうが、
私は偶然に冒険時代の飛行家たちのことを調べていて、
インスピレーションを得たのでした。
ナルシアに問われて、『ハウルと火の悪魔』でかかしの姿をどう描いて
いるのかを調べた、ハロウィーンの10月に。

(マーズ)