10.17
「かいつり」という子どもたちの行事が、
四国の山中に今も細々と残っています。
ちょうど、ペコちゃんとポコちゃんぐらい、
小学生の子どもたちが参加する行事です。
いえ、子どもたちだけが行う楽しみです。
かいつりは、小正月の1月15日(本来は旧暦の)に行われます。
つまり、新年を迎える行事です。
村の子どもたちは一緒に集まって、まず
集落の家の数だけのカユ箸をカシの枝で作ります。
大きい子が小さい子に教えながら。
そして、夜になると再び集まり、仮装をして、
家々を回るのです。仮装といっても、いつもと違う
格好をしているぐらいで、ゴーストになったりはしません。
縁側などへお盆に乗せたカユ箸を置いて、
戸を叩いて、さっと隠れます。
小さい子は大きい子に守られながら。
姿を見せてはなりません。神なのですから。
すると、
家の人が出て来て、お盆にお餅を置いてくれるのです。
正月神さまのために。
子どもたちはこうやってカユ箸を配り、
お餅をもらって集め、次の日にこれを一緒に食べます。
どんなにかおいしいことでしょう。
地域によって、子どもたちは「かいつり、まいつり、きーやした。
もーちのかげ、なーいかな」
などと歌って、訪ねた家で芸をするのだそうです。
ごほうびにもらえるお餅。
まるで、ハロウィーンそのもの。
次の日は正月で、粥正月ともいいます。
家々では神様にもらったカユ箸を使って、
家の中や畑にいらっしゃる神様に新年のお供え物として
粥を少しずつ捧げるのです。
カユ箸は、その後も稲を作るための
行事に何度か使われ、やがて亥の子の餅を蒸す火に
投入されて果てます。
この話をお聞きした先生は、
「子どもがその一夜、地域の神となることは教育理念や
文化の原点で、すべての年中行事のもと」だと
おっしゃっていました。
東北ではこれと同じ性質を持つ小正月の行事を、
「なまはげ」と呼んでいるのだとも。
(マーズ)
→ 2012年10月26日 「柳田国男とトリック・オア・トリート」
※小正月の神については、『遠野物語』に記載があります。