10.11
十月の町のあちこちで、黒とオレンジの
ハロウィーンカラーの飾りつけをみかけるようになりました。
でもちょっと待って。
もしハロウィーンのジャック・オ・ランタンが
アメリカ式のオレンジ色のカボチャじゃなくて、
アイルランド仕込みの地味なカブのままだったら、
ずいぶん印象が変わってしまいますよね。
もともとアイルランドでハロウィーンのランタンに使ったカブは
「スイード」とも呼ばれる黄色がかった種類のカブだそうです。
半透明のカブを透かす淡い炎のゆらめき。
闇に浮かぶ大きなカブの顔のしなびた目鼻。
かなり怖いな‥‥と想像していて、ふと思いついた事が。
宮崎駿監督のアニメ作品『ハウルと動く城』に登場する
大きなカブで頭ができているカカシの「カブ」って、
本家風ジャック・オ・ランタンじゃないでしょうね?
あわててダイアナ・ウィン・ジョーンズの原作小説
『魔法使いハウルと火の悪魔』(徳間書店)の
書評を書いたマーズを召還すると、
さっそく蔵書の山を掘り返して
カブ頭のカカシの描写を拾い出してくれました。
しなびた蕪で出来たカブ頭“turnip-head”の中身は、
ランタン用にくりぬかれているのかいないのか。
マーズによると、頭の中に、
ある物が収まる場面があるので、
くりぬかれていたのかもしれないとの事ですが。
でも、収穫期にまるでヒトの頭のような作物が
畑にごろごろしていれば、それをひょいと
カカシの頭に使うのはごく自然な事でしょう。
頭に蕪を使った案山子の出てくるお話は
そういえばむかし児童書や怪奇小説で読んだ気もします。
英国のカブを使ったカカシを見てみようと思い、
「turnip(蕪)」「scarecrow(カカシ)」で検索すると
どどどっと「Howl’s Moving Castle」(原作本の原題)が、
しかも原作本以上にアニメ映画版の
キャラクター紹介がネット検索の上位に並びました。
すごいわ、カブ!というか世界のミヤザキ!
原作のカブ頭のカカシは相当ブキミだそうですが、
アニメ版のカブはものすごくいい子だもの。
‥‥キャラクターの人気は良くわかりましたが、
やはり昔から英国圏のカカシは頭にカブを使うようで、
まるで本物のヒトのように畑に立つ、良く出来た
「昔ながらのカブ頭の案山子」の画像も見ることができました。
どうやらカカシのカブは、ランタンではないようです。
普通のカカシは農夫のお古を着ていますから、
黒服の正装のカカシなんて、
少しハロっぽい気がしたんだけどなあ。
あっ!そうだ、ジャックだ!
ジャックに似てるんです。
ジャック・オ・ランタンに、というより、
極めつけのハロウィーン映画
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の主人公、
ジャック・スケリントンに!
アイルランドのカブのランタンは
頭蓋骨を模したものなのだそうです。
となれば。
カブでできたジャック・オ・ランタンを間に置いてみれば、
骸骨のジャックとカカシのカブは兄弟のような関係?
(ナルシア)
『魔法使いハウルと火の悪魔』
著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
翻訳:西村 醇子
イラスト:佐竹美保
出版元:徳間書店1997
☆文庫版(2013)もあります。