2010
10.06

あまりに優れた頭脳を持つため「悪魔くん」と呼ばれる
一人の天才少年が貧しさも戦争も無い、
全ての人が平等に幸せに暮らせる世の中を作るため、
黒魔術を研究してファウスト博士に師事し、
その技術を継承し、悪魔を召還し、使役しようとする。

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人類全ての平和と平等いう目的を達成するために、
『悪魔の力』を手段として用いる事は許されるのか、
サンデル先生の授業で討論してもらいたいテーマですが、
それはさておき現代でこそ黒魔術や錬金術は
日本のコミックやアニメでは欠かせない設定の一部となったものの、
60年代に本格的に魔法陣を描いて悪魔を召還し、
救世主を目指した果ての天才少年の悲劇の物語、
さすがは戦場にゲーテを隠し持って行った水木先生ならでは、
そりゃあ世間に売れる訳が無い。
と、思ったら、その後ちゃんと売れるように作り直すのが
また水木先生並びにスタッフの皆さんの偉い所であります。
私は朝ドラは見ていませんでしたが。

そんな訳で多くの人がイメージする悪魔くんは
ソロモンの笛を操って悪魔メフィストを従わせ、
悪い化物をやっつける正義のヒーローだと思いますが、
本来の「悪魔くん」のなんともいえない暗鬱な力強さは
どんな手段を使ってでも貧しさや苦しみから抜け出そうと足掻く
時代背景と水木先生の信念が滲み出て壮絶です。

貸本漫画「悪魔くん」誕生から半世紀近く経って
水木先生はすっかりシアワセになられたようですが、
漫画史上に残る伝説の名場面である、
ラストシーンの蛙男と元・ヤモリビトとの会話が、
ぐるりと時代が廻ってまさに再び、
現代そのものを現わしているようで、
それ故の復刻出版かもしれません。

(ナルシア) 2010年10月06日(水)