2005
10.29

ハロウィーンのお仲間は、
オレンジ色のカボチャに黒い魔女に猫に蝙蝠に蜘蛛、
あと、真っ白いガイコツにも参加して貰いたいなあ。
と、いうわけで、ちょっと派手目な骨のオバケのお話。

ある男性が住み慣れた都会を離れ、
まだ造営中の町に移り住みました。
ある日、寝室を出て扉を開き、中庭を見てみると。

死人のしゃれこうべどもが、いくらと言う数も知らず、
庭に満ち満ちて、上になり下になり、ころびあいころびのき、
はしなるは中へまろび入り、中なるははしへ出づ。
おびただしくからめき合いければ、

無数のドクロが中庭いっぱいに溢れてころころごろごろ、
からから乾いた音をたてて鳴り合っています。

かくして多くのどくろどもが、一つに固まりあい、
坪の内にはばかるほどになッて、
高さは十四五丈もあるらんとおぼゆる山のごとくになりにけり。
かの一つの大がしらに、生きたる人のまなこの様に、
大のまなこどもが、千万出で来て、入道相国をちょうど睨まえて、
瞬きもせず。

四十五メートルもの高さの髑髏の山に千万の目玉、
中庭に気軽に出て来たにしては
ものすごいスケールになったものですが、
こちらも少しも騒がず睨み返すと、さしもの化物も、

霜露なンどの日にあたッて消ゆるやうに、跡かたも無くなりにけり。

むくむく湧き出た数限り無いしゃれこうべが
リズミカルに転がり回ってからから音を立て、
まるで南米あたりの陽気なガイコツのよう。
果ては合体して、目玉がずらっと出て睨む。

私はこのドクロのオバケがとても好きなのです!

この化物が出たのは、治承四年(1180年)、
三歳で即位させた安徳帝を連れて、
平家が京都を捨て都移りをした福原の都。
目撃した男性は、入道相国・平清盛その人。
平家物語 巻第五「物怪之沙汰」より)

(ナルシア)


『平家物語 ビギナーズ・クラシックス』
角川ソフィア文庫