10.29
ハロウィーンのお仲間は、
オレンジ色のカボチャに黒い魔女に猫に蝙蝠に蜘蛛、
あと、真っ白いガイコツにも参加して貰いたいなあ。
と、いうわけで、ちょっと派手目な骨のオバケのお話。
ある男性が住み慣れた都会を離れ、
まだ造営中の町に移り住みました。
ある日、寝室を出て扉を開き、中庭を見てみると。
死人のしゃれこうべどもが、いくらと言う数も知らず、
庭に満ち満ちて、上になり下になり、ころびあいころびのき、
はしなるは中へまろび入り、中なるははしへ出づ。
おびただしくからめき合いければ、
無数のドクロが中庭いっぱいに溢れてころころごろごろ、
からから乾いた音をたてて鳴り合っています。
かくして多くのどくろどもが、一つに固まりあい、
坪の内にはばかるほどになッて、
高さは十四五丈もあるらんとおぼゆる山のごとくになりにけり。
かの一つの大がしらに、生きたる人のまなこの様に、
大のまなこどもが、千万出で来て、入道相国をちょうど睨まえて、
瞬きもせず。
四十五メートルもの高さの髑髏の山に千万の目玉、
中庭に気軽に出て来たにしては
ものすごいスケールになったものですが、
こちらも少しも騒がず睨み返すと、さしもの化物も、
霜露なンどの日にあたッて消ゆるやうに、跡かたも無くなりにけり。
むくむく湧き出た数限り無いしゃれこうべが
リズミカルに転がり回ってからから音を立て、
まるで南米あたりの陽気なガイコツのよう。
果ては合体して、目玉がずらっと出て睨む。
私はこのドクロのオバケがとても好きなのです!
この化物が出たのは、治承四年(1180年)、
三歳で即位させた安徳帝を連れて、
平家が京都を捨て都移りをした福原の都。
目撃した男性は、入道相国・平清盛その人。
(平家物語 巻第五「物怪之沙汰」より)
(ナルシア)