2014
08.22

『十月のカーニヴァル』

ああ、惜しい。出版がもうちょっと早ければ、 更にハロウィンを楽しく待つ事が出来たのに。

怪奇味のテーマ別書き下ろし短編競作という 雑誌的スタイルで人気を博した ヒット「文庫」シリーズ「異形コレクション」、 今回新書版で登場は、新作と並んで 過去の名作を紹介するその名も「綺賓館」。 その第一弾は伯爵、いやその、 ホラーアンソロジスト井上雅彦氏の心より愛する 「十月のカーニヴァル」 ──ハロウィンを主題にした短編集です。

ブラッドベリ原作の萩尾望都描く一族の集会、 夭折された小泉喜美子の長編小説の一部といった 本格的なハロウィンものばかりでなく、 山田風太郎のおどろどろしい曲馬団の空中ブランコ、 宮沢賢司の夜店に現れる異形等、 なるほど日本にも十月の闇はあったのだな、と 納得してしまいます。

群れ集った精霊達の踊りの輪の中で、 最近の読者は過去の作家の作品に触れ、 旧い読者は最近の書き手の中から、 それぞれが新しいお気に入りの作家を見つけだす、 これは暗く華やかな宵祭。(ナルシア) 2000年11月21日(火)

『十月のカーニヴァル』
監修:井上雅彦
出版社:光文社カッパ・ノベルス