Home » 地めぐり » 魔女と雪の山
3月
05

思わぬ雪で、帰り道の高速道路が通行止めになっていた。
高速道路と絡みながら走る旧道も、けっこうな山奥で、
滑る箇所があると教えられた。
となれば、適度な時間で帰れる迂回路は、基本的に1本しかない。
県境の長いトンネルは、まだ雪にやられていないだろうか。
心配しても、行ってみなければわからない。
特別なタイヤもチェーンも、当然持っていない。
とりあえず、通行止めなどの情報が入ってないという
国道事務所の人の言葉を信じ、コンビニで食糧を入れる。
夜の雪山越えに挑んだ白いクルマには、魔女ふたりと、行った先で
買い求めた、2m近い長さの、白い棚ひとつ。
長いトンネルの手前までは、道路には雪がなかった。
周囲の森は、きれいに粉雪をかぶっていたけれど。
トンネルを抜けると、路上にも同じような粉雪が。場所によっては数センチ。
少し前に追い抜いて行った1台が残したわだちをなるべくトレース
しながら、40キロ以内に抑えて、ひたすら下り坂を進む。
人家もない道が続き、ふと見上げると星が出ていた。
きっと大丈夫だろう、いくらなんでも大丈夫だろう。
結果は大丈夫で、午前1時には帰宅したけれど、
あと1時間遅ければ、大丈夫ではなかっただろう。
そしてあの雪山を、あの夜遅く越えていった魔女のクルマは、
1台だけだっただろう。
予期せぬ冒険の相棒となった白い棚には、
どんなものが飾られるのか、楽しみにしている。
私の棚ではないけれど、相棒感は当分消えない。